変な家の変な女(中編) 変な家の中にいた変な女とどうしよう。後編→「お腹、すいたなぁ。」
ガチャリ、と金属と金属が接触した音がして門はさびた鉄とともにギイイとなって開いた。庭を見る限りではとてもよく整備されている。 一歩入ると丸い石が玄関まで五個ほど並べられていた。玄関までの道の横には菖蒲が植えられていて満開、とてもいい香りがした。 周りの木々は丸かったり四角かったりと一寸の乱れもなく綺麗に整っていてそれぞれが緑に映えている。そしてまた玄関、いや、家のほうに 視線を戻す。本当に、不自然な家だ。ここに立ってみるとよくわかる。誰が何のために作ったのだろう・・・。ともかく、立ったままは怪しい・・・。 僕は庭に敷いてある石を一度見て前へ歩き出す。ようやく玄関扉の前へついた。ん?おかしいな、インターホンがない。扉をたたけばいいのだろうか。 しかし、この一階部分の和風の家は今にも崩れ落ちてしまいそうだ。叩いても平気なのか?大声を出すのも・・・はぁ。仕方がない、叩こう。 僕は手のひらをグーにして甲を扉のに当てて軽くガンガンガンと扉を叩く。「すみません、雲雀ともうしますが。」少し待つ。返事は、なし。 誰もいないのだろうか。念のためもう一度叩こうかな。一度ゆっくりと息をはいてまた、扉を叩く。ガン・・・・! 「あなた、誰?」 心臓、飛び出るかと思った。いきなり庭の端から一人の女が出てきた。この女が、 ?僕は扉からいきなり出てきたその女にばっ! と視線を移す。本当に、なんなんだ。まったく気配がなっかったうえに足音すらもしなかった。女は不思議そうに僕のほうを見てくる。そして 僕の顔を見ていたと思えば今度はクスクスと笑い始めた。人の顔をみて笑うなんて失礼だな。僕はキッと女を睨む。すると、一瞬びっくりしたように 笑いをとめたがすぐにっこりと笑った。 「笑っちゃってごめんなさいね。だって貴方、そこに立ったまま固まっていて私が話しかけてもずっと黙っているんですもの。まるで人形みたいだった から思わず笑っちゃったの。わざとじゃないのよ、別に貴方の顔がどうとかじゃないから。もう一度聞くけど、あなた誰?」 「雲雀・・・恭弥。」 「そう、雲雀さんね。さて、この家に何の用かしら?この家は私しか暮らしてないし誰も近寄らないわ。お客さんだなんて珍しいもの。 まぁ、立ち話もなんだから縁側でお茶でも飲みながら話しましょう。」 そういって女は庭の方へと歩き出した。僕も後をおう。女は見る限りでは幼そうだ。15、16歳ぐらいだろう。ぴっちりとしたTシャツに長さが太ももの真ん中ぐらいの Gパンを履いて足は素足にサンダルという格好で肌は白く腕からウエストから足までほっそりとしていてとても細身だった。髪は茶色に染めていて長さはショート。 いや、ウルフカットといったほうが合うかもしれない。女は一度僕のほうへ振り向いて僕がちゃんとついてきているかどうか確かめてからまた前へと向きなおし そのまま歩き続ける。いったい僕は何をやっているのだろう?木といっても膝ぐらいまでしかないものだがその、低い木の並ぶ道を抜けると、殺伐とした広い 庭に出た。女は「ここが縁側。好きなところに座ってて。飲み物持ってくるわ。麦茶でいいでしょ。」こういって縁側で履いてたサンダルを適当に脱いで木で造られている 縁側に足をかけて家の中へと入っていった。ぼくは言われたとおりに縁側の適当な所へと座る。なにも、ない庭だな。大きな木が二本と石の塀。それからまったく合っていない 木製の白いテラス。このテラスは割りと大きく僕が玄関から見たものと同じだった。庭の隅に何かいる?黒い影がゆらっと出てきて僕の前を走り去っていった。なんだ、猫か。 野良猫が住み着いているのか?もしかしたらここの庭は誰にも邪魔されない絶好の場所なのかもしれない。広い縁側には女の物かは分からないがCDやMD、雑誌や漫画、 お菓子の空き袋、服などがそこらじゅうにおいてあった。はっきり言って汚い。片付けはしないのだろうか。カランと音がして女が家の置くから氷がたくさんはいった麦茶とナミナミといれて持ってきた。 「おそくなって、ごめんなさい。コップが見当たらなくて。はい。」 「どうも。」 「ところで今日はうちに何の用かしら。」 「いや、特には用はなくて、変な道があったから暇つぶしに歩いてきたらこの家があっただけ。」 「そうなんだ、まっそんなことだろうと思った。」 「なぜ、わかるんだい?」 「だって貴方がこの家に来るまで貴方のこと見てたんだもの。あの道、うちの二階からみると全体的に見えるから。」 「じゃあ・・・君は僕の事をずっと見ていたのかい?」 「そうよ。面白かったわ。ひさしぶりに誰かが入りこんだわってね。」 「・・・・。」 なんともいえない感じだ。見られていたとわ・・・・。まるで罠にかかったネズミみたいじゃないか。面白くないな・・・。 「あ、そうだ。雲雀さん?」 「なに。」 「私の名前を言ってなかったわね。 って言うの。って呼んでくれればいいわ。」 僕はうなずく。それにしても、ここは静かだ。周りの音がなにも聞こえない。なにも…あえて言うならば木々が 風にふかれて葉と葉がこすれあう音や鳥のさえずりなどだ。おん…いや、は縁側に持ってきた麦茶をぐいと 飲みうちわで首もとを扇いでいた。そもそも学校はどうしたのだろうか。会話も特にないので聞いてみるか。 「ねぇ、?は学校とかはどうしたの。あとは、ご両親とか。」 「ふふ、なんで疑問系なのかしら。まぁいっか。学校は辞めたよ。一年で。親は・・・死んだ。いや、正しくは私が殺した。」 「・・・・殺したの?」 「あら、でも犯罪者じゃないわよ。勝手に死んだのよ二人そろって仲良くね。私が、精神的に追い詰めたからそうなるだけ。」 「なぜ?」 「正直うざったかったの。なんか跡継ぎがどうこうで、お前はちゃんとした立派な人間にならなくちゃいけないとか毎日言い聞かされて テストの点数が悪かったら一ヶ月外出禁止、一日五時間は勉強。週三日は、習い事。うんざりだわ。毎日いろいろ押し付けられて。 周りの子達は遊んだり雑誌を読んだり買い物へいったり・・・とてもうらやましかったわ。この親の押し付けがましい行為のおかげで 友達もあんまりいなくていつも一人ぼっちだったの。・・・ってこんな話聞いても退屈よね。」 「いや、いいよ。別に聞いてて面白いわけじゃないけど興味はあるから。」 「そう、それでいつかは忘れたけど堪忍袋の緒が切れて荒れたの。親を先生を友達を殴って殴って、タバコとかお酒とか 普通に飲んで売春もした。家に何日も帰らなかったり。親が一生懸命捜したけどそのたびに私は罵声をとばし警官すらも 殴った。とことん暴れてすっきりしたら学校はもちろん退学、世間から見放されて家は他の家に囲まれて閉じ込められて 気が付いたら親もいなくなってた。あとで警察に電話して聞いたら山の中で首を吊って死んでたんだって。馬鹿みたいよね。」 「それで、連絡したあと両親はどうしたの。」 「んー、警察の人に親族の方ですかって言われたから違います。っていってそのまま。多分むこうが処理してくれたと思う。」 「君は、はそれで寂しくないの?」 「あはは!なんでそんなこと聞くの?寂しくないさ!だって親が残してくれた遺産はいっぱいあるし誰からも何もいわれないし平和な日々だよ。 清々してるし。こんなに幸せな人生ないさ。」 なるほど、だから表札の名前がグチャグチャに塗りつぶされていたのか。若干16歳ほどなのに波乱万丈な人生を 送ってきたんだな。おどろきだ。・・・強いふりして、確かに強いんだけど蓋を開ければ脆いタイプだろう。 「ふーん。毎日、一人でしょ?」 「もちろん、気楽だわ。」 「・・・いいね。」 「?あーえっと、雲雀さんの両親とかは?」 「ちゃんといるよ。嫌い、だけどね。一応大学は出て飛び級して二年で卒業した。最近ここら辺に引っ越してきたんだ。」 「そうだったの?どう、この街は。素敵でしょう?」 「うん。まだよくは分からないけど。居心地はいい。でも、景色がつまらない。活気はあるけど死んでるみたいな気がする街だ。」 「なにそれ!笑えるね!確かに内面は死んでるよ、腐ってる。でもね、この家の二階から見るこの街は面白いよ。死んでない感じがする。」 「どんな、感じなのさ。」 「行って見れば分かるよ。二階のテラスに行く?」 僕はうなずく。 「怖くないなら屋根からのほうがいいんだけど・・・・。平気かしらね、ひょろひょろのお兄さん!」 「(むっ)失礼だな。」 「ちょーっとからかっただけよ!さ、そうと決まったら靴脱いで着いてきてね。」 あ、ちなみに屋根の上に上るんだから靴は持ってきてね。 はお茶目に笑ってテクテクと歩いていってしまった。僕も、後を追わなくては。急いで靴を脱いで、脱いだ靴をもってのあとを追った。 ちょっと、楽しいかもしれない。そろそろ、お腹もすいてきたなぁ。何を食べようかな。まだ買い物すらしてないや。どうするか。 倖 燗拿20070301 |